キャリア教育プログラム「ベビーカーの旅」講師として登場しました
皆さんは「キャリア教育」という言葉を知っていますか?
私は今回はじめてこの言葉を知りました。
今の子どもたちは将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するための力が求められており、この視点に立って教育の観点からキャリアを学ぶ機会をつくっていくことがキャリア教育というものになります。
2015年11月、そんな場に子どもを持つ母親のひとりとして講師に立たせてもらう機会をいただきました。
今回のキャリア教育のプログラムでは、高校2年生の家庭科の授業にて「ベビーカーの旅」というプログラム名で、実際に校内をベビーカーで回ってもらいながら、子どもを持つ親の生活の疑似体験をしてもらいました。
ベビーカーを使用する体験を通し、子どもを育てることの想像や実感を伴ってもらうこと、ひいては他者の立場に立って考えることで、今周りを見渡してみてどのような人が助けを求めているかを知るきっかけづくりと捉えています。
今回の授業の講師として、私はArrowArrowというNPOで働く人であり、妻であり、母である人間であるということを伝えました。
実際のプログラムでは、赤ちゃん人形を使いながら実際のベビーカーに乗せて、そして手には他の荷物をもち、段差のある校舎内を移動したり、階段で上り下りをしたりしてもらいました。
体験をしたあとは各グループで
・家族に起きた「困ったこと」は何か
・困ったことの中でも「家族の工夫で解決したこと」「ベビーカーなど商品で解決できそうなこと」「その他環境で解決できそうなこと」の3つに分類したらどうなるか
・高校生の私たちにできそうなことをひとつ提案するとしたら何か
という質問についてまとめ、発表してもらいました。
それぞれのグループから、実体験を伴った困ったことが未体験者たちからの新鮮な目線で発表されていきます。
「1人で荷物をもってベビーカーを動かすことは大変」
「階段の上り下りでベビーカーを畳んで上り下りするとなると、赤ちゃん、ベビーカー、荷物を誰かと分担しないと1人で持ちきれない」
そんな困ったことから
「お母さん1人が全部やるのではなく家族が協力したほうがいい」
「荷物を分担しない階段の上り下りやもう1人子どもがいる場合そのお世話とベビーカーを動かすことが一緒にできない」
「ドアを開けてあげるとかエレベーターのボタンを押してあげるとかベビーカーを動かす人の前にたってできることがある」
という意見が出たり、
「これからはベビーカーを押している人がいたらエレベーターを優先させたり道をゆずったりしたい」
「何か困っていそうな家族がいたら笑顔で話しかけたい」
「周囲を見渡して通行していきたい」
というこれからの自分たちにできそうなことも発表にでてきました。
最後にその発表を受けて私からも感想を伝えました。
実は私にもあるミッションが掲げられていたのです。
このプログラムは、今回のキャリア教育プログラムを考えた東京都立大泉高校の先生と赤ちゃん用品を企画製造しているコンビ株式会社さまとその間にたつキャリア教育コーディネーターの方々とがつくったものですが、
その開発の最中に携わらせてもらう中で、コンビ株式会社の野水さまより「子育てにおける”光”を伝えてあげてください。今お母さんを取り巻く環境は大変でしんどくて苦しい部分ばかりが取り上げられてしまっていますが、子どもをもつことはこんなに楽しいんだ、という光の部分も子どもたちに伝えないとこの実体験はただのしんどいものだけという印象になってしまう」
私もまだ娘が8ヶ月という新米お母さんなわけなのですが、今見えている光はなんだろうかとここに至るまで考えてきました。
そこでたくさんの喜怒哀楽の娘の表情写真を発表資料に入れさせてもらいました。
私の中では子育ては光も闇も両方あるものだと思っています。それは今目の前にいる高校生の皆さんの学校生活と一緒で、「部活動しんどいなー」「テストでいい点とれた、やった!」「今日ともだちとたくさん話しておもしろかったな」「また親に怒られた、悲しい」という感情や行動と同じなのです。
子育ても1日のうちでそんなめまぐるしい変化があり「爆笑するほどおもしろい!」「泣き止まなくてイライラ」「寝顔に心ほっこり」「ご飯をなげつけて悲しい」といった楽しい部分とそうでは無い部分が常に混在しているようなものなのだと思います。
でも、だからこそ、その場にいることで気がつくことがたくさんある。
そんな話をさせてもらいました。
高校生の今は、働くことも子どもを育てることももしかしたらまだ実感するにはだいぶ先に思うことなのかもしれないのですが、今回の授業が彼ら、彼女らのこれからの未来に何か影響するものになるのだとしたらとてもうれしいなと思いました。
この度はこのような貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。
東京都立大泉高校、家庭科村田先生・守谷先生ありがとうございました。
コンビ株式会社、野水さま・森さまありがとうございました。
キャリア教育コーディネーター、松倉さま・小寺さまありがとうございました。
(海野千尋)