【中小企業ワークスタイル研究会報告レポート】「ベンチャー企業=仕事一筋」はもう古い!?

【執筆者:海野千尋】

8月6日(水)に中小企業ワークスタイル研究会が開催されました。
今回のテーマは、「『ベンチャー=仕事一筋‼︎』はもう古い⁈〜女性社員の産育休取得をきっかけに全社員が自身のライフイベントについて真剣に考えたベンチャー企業の取組」です。

「家事代行」という日本には今までなかったサービスを、産業として浸透させたいという強い想いをもった株式会社ベアーズから高橋ゆきさんにお越しいただき、トークセッションをおこないました。



そもそもベアーズはどんな仕事をしているか、そしてどんなミッションをもって日々活動しているかをご紹介いただきました。
ベアーズは社員を「社員」という言い方をしておらず「チーム・ベアーズ」という名前をつけて呼び合っています。
それくらい「会社」「社員」という垣根を超えて1つのチームなんだという意識を経営層も社員ももっていることがわかります。

今回のトークセッションの鍵は2つの視点をもって進みました。
・女性の産育休取得以前と以後で組織がどのように変わりましたか?
・組織が個人のライフイベントを考えることでどのような変化が起こってきましたか?



高橋さんにお話をお聞きする中でさまざまなキーワードが出てきました。
「ベアーズではキャリアプランじゃなくてライフプランを書かせています。何年後に仕事でどういうプロジェクトやっていたい、とか何年後に課長になっていたい、とかじゃなくて、何年後に結婚して、何年後に出産していたいか、そんなことを男女違わずやらせています。さらにそれを経営層からフィードバックさせます。」
「”時間=命”だと思っています。会社で仕事している時間も命を使っているという感覚。」
「だからこそ社内で長時間仕事をするということに意味があるとは思わない。でもそれは仕事をちゃんとやらないということではなくて、誰にも等しく大切な時間があるということ」
「あなたのナンバー2は誰なのか、それを意識して、本人に伝えることで、育っていくんだと思う。みんな誰かのナンバー2になって働いているのだから」
「経営者が変わらないと変革はない、ということをよく聞くけど、経営者が変わるきっかけをその近くに居る人がどう作れるか、だと思います。私も代表へ諦めずに伝え続けていますから」
「今は私たち会社も変革期で、女性の産育休取得が少しずつ増え始めていて、今後それがどう組織内に変化をもたらしていくかを見ていく段階です。」
高橋さんの言葉から会社に対して、そしてそこで働く人に対しての熱意と愛情を感じます。

トークセッションが終わっても様々な質問が飛び交いました。



「ライフプランを社員にヒアリングするにおいて、男性が女性にヒアリングしてもいいのだろうか?」
という質問にも、ベアーズでは、男性が上司で女性の部下に対してもストレートにヒアリングしているそう。
「普段から社員一人一人とコミュニケーションを取っておくことが大事。パワハラとかセクハラとかいろいろ言葉があるけれど、そう思われてしまう程度のコミュニケーションしか取れてないことに問題があるという考え方もできる。普段からダイレクトコミュニケーションを取っておくことが大事。」とお話されている高橋さん。
ベアーズの組織内でのコミュニケーションが密に取り交わされていることで、互いの信頼度が高いからこそ、伝える言葉・受け取る言葉が他社とは違うことがわかります。 
「女性の幹部登用について、幹部になることに積極的でないということが取り上げられたりするが、高橋さんのご意見をお伺いしたい」
という質問には、高橋さんからは「女性は最後の最後に自信が持てない。女性に自信を持ってもらう為には、褒めるのではなく、小さくてもいいからプロジェクトを任せることがポイント。今の時代には、まずは任せてみることが大事。」という返答でした。女性特有の心情を踏まえての後押しが必要という意見、参考になりました。

充実のトークセッションの後には参加者主体のワークショップへ。

 
ワークショップの内容は、「あなたの在りたい働き方はどんな働き方ですか?」と「その働き方を認めてもらうために組織にどのようなことが貢献できますか?」を働き方デザイン本を元にスタートしました。
実際に各自が記入してもらったあと、各自の発表にうつりました。



その後は各テーブルで出た意見のシェアをおこないました。

「専業主婦で子どもが2歳の時、いろいろ考えることがあり、今の
うちから何かできることはないかと市民団体を立ち上げた。その活動を通じて、ママの力を使えないかと起業準備中。どんな働き方、生き方をしたいかということについては、子どもの送迎に自分が立ち会う、在宅勤務や子連れもOKの働き方を実現していきたいと考えている。」

「産休を取る社員の立場を考えて、今日のワークを考えてみたら、全然考えることができなかった。働くことだけでなく、子どもを産み・育てることってどういうことなのか、考えるキッカケになったグループで出た意見としては、子どもを産み・育てることがキャリアダウンではなく、これからの仕事にも活きてくるのではないかという意見が出た。」

「全員子どもがいるグループだったので、どうやったら子どもを育てながら成果を出し続けることができるのかというテーマがメインになった。ミーティングなどの時間を上手く調整して時間を作る、No.2を見つける、育てる中で生産性が上げていくことが大事なのでは。また、ライフイベントを迎えてからではなく、これからライフイベントを迎える社員に向けて、今から考えていくことが必要なのではと感じた。」

「チームを創る努力をする、個人が危機管理を持っておくことが重要なのではという意見が出た。最後に、自分の家族をチームの皆に共有しておくということが良いのでは。子どもと楽しんでいる様子を他のチームメンバーと共有しておくことで、自分の先にいる家族をイメージできることって大事で、それが早く帰れたり、協力しあえたりするチームになっていくのではないかという話にまとまった。」



各テーブルで出た意見がまた他のテーブルの人にもうなずきを与え、それぞれの意見や経験が他の人にもつながっていく様が見られました。
今後も中小企業ワークスタイル研究会は「ライフイベントを経ても働き続ける企業がなぜ良いのか、どう変化してきているのか、どんな影響が出ているのか」に注目し、それを阻む固定概念を打破していく場をつくり続けたいという旨を伝え会を終了しました。

この度のゲストスピーカーとしてお越しくださった株式会社ベアーズ:高橋さま、会場場所をご提供くださったサイボウズ株式会社:渡辺さま、
そして8月猛暑の平日夜にお集りいただきました参加者みなさん、本当にありがとうございました。